寺報「月照」第14号

平成24年 元日

慕古心(もこしん)
道元禅師さまからのメッセージ

足ることを知る心
貧しいことが善でもありません
豊かなことが悪でもありません
貧富にかかわらず、
貪欲の心がおこるとき
人は美しい心を失います
仏心とは
足ることを知る心のことです

「慕古心」について

時を超えて、人を超えて、語り、受け継がれ、伝えられる「真実(本当のこと)」は永遠に輝いて、いつも新しいのです。道元禅師は、現代を生きる私たちに、「真実(本当のこと)」をたくさん教え示してくださっています。そのひとつひとつを学び、実践することを「慕古心」というのです。
「慕古心」とは、「永遠の真実」を探し求めることであり、「道元禅師からのメッセージ」はそのための羅針盤に他なりません。

 謹んで新春のお慶びを申し上げますと共に、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
 仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)というお経の中で、お釈迦様はまず人生は苦であると観じられ、それには原因があり、原因が集まって苦を生むのであるから、苦を滅するにはその原因(迷いのもと)を滅しなければならない。そのためには、正しい見解(正見しょうけん)、正しい考え方(正思惟しょうしゆい)、正しい言葉(正語しょうご)、正しい行動(正業しょうごう)、正しい生活(正命しょうみょう)、正しい努力(正精進しょうしょうじん)、正しい意識(正念しょうねん)、正しい精神統一(正定しょうじょう)などの八つの正しい道(八正道はっしょうどう)を修めるべきであると説かれております。
 八正道とは、仏教者が生きて行くための八つの大切な教えの事です。これら八つは個別のものではなく、互いに関係しあい正しい生き方を示しています。その中でも、正しい見解や正しい信仰を持つための「正見」は仏教徒の考え方や行動の基本となるものです。正しい見解とは、知識(主に偏見や先入観)や好悪の感情抜きに見ることです。何時も何事にもそのように向かい合わなくてはなりません。 日々の生活を通じてお釈迦様のみ教えを心とし、正しい道を歩いていきたものです。 なお、昨年は、当山が所蔵する江戸時代の皇族や武士の奉納和歌や書簡をまとめた『月照寺明石柿本社奉納和歌集』が奉納和歌研究会の鶴崎裕雄、神道宗紀、小倉嘉夫各先生の調査・研究により十年の歳月を費やし出版されました。当山の歴史に残る、和歌研究の貴重な資料として喜んでおります。 最後になりますが、皆様にとって本年がよい一年でありますことを重ねて祈念申し上げ新年の挨拶とさせて頂きます。

合 掌
月照寺住職 間瀬和人

大本山永平寺参拝記

 平成二十三年五月二十一日~二十二日の一泊二日・月照寺主催の大本山永平寺参拝の旅に、お誘いを受けてお参りさせて頂きました。今回が2回目の感動の永平寺参拝です。
 前回は父を亡くした年に行きました。悲しみの中、バスの道中では楽しい会話や当時の間瀬元道住職、間瀬和人副住職の説明、奥様の温かいお見送りに励まされて、素晴らしい道元禅師のゆかりの名刹に訪れて、
歴史ある仏像や絵画を拝見させて頂き、本当に今でも思い出として輝いています。また、機会があれば是非訪れたいと思っていました。今回は、少し体調を崩した中でしたが、日頃のお祈りが効を奏したのか…?月照寺主催の大本山永平寺の素晴らしい旅にお供できた事は涙が出るほど、嬉しい修行旅行でした。バス会社の方を先頭に、心より感謝させて頂きます。
 また、お世話係りの檀家の皆様に至っては修行を積んだ先達がおられて、大本山永平寺に宿泊した時は、修行僧に喝を入れるような目で接しておられる姿は私としても今後の参考にさせて頂きたいと若輩者ですが思っています。バスの中では和気あいあいで、この紙面では紹介できない事もたくさんありました。また、今年は3月の東日本大震災の影響が大きく、永平寺参拝者が少ないというお話です。この場をお借りして少しでも早い復興をお祈りさせて頂きたいと思います。
 朝、バスは月照寺を出発、最初に「彦根・清涼寺(井伊家菩提寺)」に到着。江戸時代には各所から雲水が集まって修行されてきたという由緒正しいお寺です。しかも女性の修行僧の方の説明を受け、座禅堂やここでしか見れない美しい花々を見て感銘しました。そして、ドライブ・インでご馳走を頂いて北陸道に入り「螢山禅師のご生誕の地である武生・誕生寺」です。ここでは、残念ながらお会いできませんでしたが興宗和尚の代理の雲水さんとバスで一緒の皆様と読経を唱え、素晴らしいお話をして頂きました。螢山禅師様といえば一日お粥一杯で、すさまじい修行をされた方だそうです。その後「伝光録」としてまとめられた。そして、横浜の總持寺の建立に至ったそうです。
 そして、いよいよ一路、永平寺です。雲水さんの説明を受けて部屋が決まり、お風呂、夕食です。食事も修行という事で「五観の偈(げ)」を唱えて頂きました。道元禅師様の正法眼蔵の教えを少し実践できたかも知れません。その後、座禅堂での修行です。足が痛いとは言えない、ありがたい思いでいっぱいでした。永平寺でしか体験できない今回の旅行は、貴重なものだと思います。引き続いて本堂で修証義のお経が流れ、焼香の時は涙が出る程、感動しました。その後、一般では入れない「吉祥閣」での記念撮影や雲水さんの貴重な絵画や門前の阿吽の意味を説明して頂いて、深く感動致しました。また、永平寺本山でしか購入できない数珠を購入しました。(お線香もあるそうです。次回は是非購入したいと思います。)
 朝の食事が終わってバスに乗ろうと思ったら凄い雨です。これも仏様がもしかしたら今回の東日本大震災の被災者の事を思って、泣いていらっしゃるのかなと思った次第です。大雨の中、一路バスは名古屋へ。到着すると不思議に雨は上がって天気が回復しました。仏様のご加護だと思います。お昼は、素敵なホテルのレストランで地元の食材を使ったお料理です。(何故か食事の事ばかり書いていますが…。)
 次に向かったのは「日泰寺(釈迦遺骨安置)」です。ここでは宗派にとらわれない姿勢で仏道修行をしておられる雲水さんが座禅堂、掛け軸、ご本尊様を案内して頂きました。どれも心に染みる逸品です。素晴らしい体験でした。また、釈迦堂(別院)では雲水さんが温かく見送って頂いて心より感謝の念で感涙致しました。
 月照寺に関わる全ての関係者、間瀬元道東堂、間瀬和人住職、奥様、お世話係り、檀家の皆様の本年のご多幸を祈り、新年の挨拶とかえさせて頂きたいと思います。

「月照寺明石柿本社奉納和歌集」を出版

 奉納和歌研究会の鶴崎裕雄氏(帝塚山学院大学名誉教授)・神道宗紀氏(帝塚山学院大学教授)・小倉嘉夫氏(大阪青山短期大学准教授)の三氏が十年余の歳月をかけ編集された学術的労作です。三人の先生方へ厚くお礼を申し上げます。
「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れゆく舟をしぞ思ふ」……
月照寺は明石城本丸の地にあって平安時代のはじめ、弘仁三年(八一二)空海(弘法大師)が揚柳寺を建てたのが始まりです。その揚柳寺が後に月照寺となるのです。
仁和のころ(八八五?八八九)和歌を好んだこの寺の住職覚証が夢のお告げに従って柿本人麻呂を祀り、人丸社が出来ました。(現在明石公園城跡に建つ、西の隅櫓の前に円形の人丸塚があります)
江戸時代の初め、このように月照寺には人丸社がありました。こうした神社と共存する月照寺のような寺院を宮寺又は別当寺と呼びます。江戸時代の初め元和五年(一六一九)明石公園本丸跡にあった人丸社は現在の月照寺と柿本神社のある人丸町の地に移転しました。
明石城を西国の大名の押さえとなる本格的な城郭にしようという幕府の方針に基づくものです。幕府の命により元和三年(一六一七)人丸山に新城を築くこととなり、このため月照寺と人丸社は現在地に移転させられたのです。
移転にあたって人丸社別当坊月照寺に対し藩主小笠原忠政(忠直)の意向を伝達する執達状が出されています。現在では明石市立文化博物館の常設コーナーに展示されています。
享保八年(一七二三)人麻呂に「正一位柿本大明神」の神位神号が贈られると人丸社と月照寺は天皇や公卿たちが競って詠歌を奉納し文人や武士、町人も訪れて和歌の奉納が盛んに行なわれるようになりました。
翻刻された史料は、月照寺に奉納された和歌、縁起、祠堂碑銘ほか御祈祷、書状類が四部に分類され解題が付されています。
今回本書の序文に冷泉家当主冷泉為人様から 翻刻本「月照寺明石柿本社奉納和歌集」出版を祝賀して の寄稿を頂きました。深く感謝しているところです。
この三月十七日(土)の春彼岸法要の講演会に鶴崎裕雄先生のご厚意でお話していただけることになりました。お楽しみにしていて下さい。

中村 元

560ページ 書店価格10,500円(税込)

永代供養塔合祀墓と安心墓のご案内

永代合祀墓は、次のような方などに先々まで安心してお参りいただけるお墓となります。

◆先祖より代々受け継いでこられたお墓の後継者が途絶える方
◆配偶者や遠縁の直系に跡継ぎがいない為に「いつかお墓が
 無縁墓になってしまう」と心配されておられる方
◆配偶者がおられない方
◆お子様がおられない方

永代供養安心墓とは…
親や配偶者のお墓は建てたいが、先で無縁墓になるのではと思案されておられる方も安心してお墓を建てその後、何十年もお墓参りをして頂き、先でお参りが難しくなった時点で、当寺が永代供養塔合祀墓に合祀して、永代にわたり供養と管理を致します。

永代供養塔合祀墓お問合せは 月照寺・寺務所 078(911)4947
安心墓についてのお問合せは 富永石材 078(911)6233

日本語の中の仏教 其の4

油 断

 『涅槃経』というお経の中に次のようなエピソードがあります。お釈迦さまが、「戒」(修行をする人が守る大切なきまり)に対する真剣な心がまえを、たとえを用いて説いています。
 「昔、ある王さまがいました。王さまは、家来に油を入れた器を持たせ、人びとの間を歩かせました。そして、器の油を少しでもこぼしたら、そなたの命を断つであろう、といって、刀をもったもうひとりの部下を、後ろに立たせ歩かせました。油の器を持った家来は、心を集中させ、みごと油をこぼさずに、歩きとおすことができました。」
 王は「仏」、家来は「修行をする人」、油は「戒」、刀をもったもうひとりの部下は「いのちは、かぎりあるものだという真実」のことです。
 「油をこぼせばそなたの命を断つ」という王さまの言葉から「油断」が生まれました。なんて無理を言う王さまだろう、と思いますよね。私もそう思います。でも、もしも家来が油をこぼしたとしても、王さまは殺さなかったでしょう。王さまが伝えたかったのは、戒の大事さと、真剣な心がまえだったからです。
 戒の中には、私たちが心豊かに生きていくためのことがらが、たくさんつまっています。いのちをそまつにすることがないように、「私は?しません」とちかうのが戒なのです。
 私たちは、「刀の部下」が伝える「かぎりあるいのち」を、心豊かに生きていきたいものです。
 「油断」せずにね。

<令和24年>

1月1~3日新年祈祷(修正会) 本堂/毎朝
元旦から三日までの毎朝、平穏無事な一年でありますようにと祈願いたします。
3月17日(土)春彼岸会法要 本堂/12時受付
◆12時30分~講演(講師・鶴  裕雄氏)
◆14時~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
3月17日(永代供養塔合祀墓合同回向 永代供養塔前
◆15時30分~法要
永代供養塔に合祀されている仏様をご供養いたします。
3月31日(大般若祈祷法要  本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
大般若波羅密多経六百巻を転読し、檀信徒各家の諸願成就を祈願する法要です。
8月6日(月)初盆大施食会 本堂/8時開経
初盆を迎えられる新亡の仏様のご供養はもとより、
ご先祖、無縁の仏様にもご供養する法要です。
8月23日(木)
8月24日(金)
地蔵盆 千躰地蔵尊前
◆18時~
子ども達の純真な心を見守っていて下さるお地蔵様を
子ども達でご供養する法要です。
9月15日(土)秋彼岸会法要 本堂/12時受付
◆13時~法話 
◆14時~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
10月15日(木)お十夜法要 本堂/12時30分受付
◆13時~法話
◆14時~法要
曹洞宗のお祖師さまである達麿大師のご遺徳を偲び、
ご先祖様に感謝の気持ちを込めてお念仏をお称えする法要です。
12月31日(月)子午線燈花会・除夜の鐘  鐘楼/22時受付
◆23時~撞鐘開始(受付22時)
鐘つき志納 金1人500円以上 (全額社会福祉に寄付)
「行く年」を省み、「来る年」の決意を新たに。

お願い●市町村合併にともない住所に変更がございましたらお知らせ下さい。