寺報「月照」第13号

平成23年 元日

柿本人麿像:南北朝時代の歌人頓阿法師の作 明和7年(1770)冷泉家15代為村が寄進した像

慕古心(もこしん)
道元禅師さまからのメッセージ

「どう生きるか」
生まれて死ぬ一度の人生を
どう生きるか
それが仏法の根本問題です
長生きをすることが幸せでしょうか
そうでもありません
短命で死ぬのが不幸でしょうか
そうでもありません
問題はどう生きるかなのです

「慕古心」について
時を超えて、人を超えて、語り、受け継がれ、伝えられる「真実(本当のこと)」は永遠に輝いて、いつも新しいのです。道元禅師は、現代を生きる私たちに、「真実(本当のこと)」をたくさん教え示してくださっています。そのひとつひとつを学び、実践することを「慕古心」というのです。「慕古心」とは、「永遠の真実」を探し求めることであり、「道元禅師からのメッセージ」はそのための羅針盤に他なりません。

 謹んで新春のお慶びを申し上げますとともに、皆様のご繁栄とご多幸を心より祈念申し上げます。
 お正月の三が日には多くの曹洞宗寺院で「修正会」新年祈祷が行われ、新年を祝い、世界の平和と仏法の興隆、檀信徒各家の平安を願い、風雨順調、五穀豊穣の祈りを捧げます。
 ところで、毎年新年にこのようなご祈祷を行い、平和や安全を祈っても、次々と様々な天災がおこります。それらによって多くの人が被災し、多くの命が失われ、種々の災難に遭遇します。大自然の営みでは、時として日照りが続き、また長降りがあり、暴風もあれば、大雪もあります。いつ、どこで、どのような災害がおこるかわかりません。私たちは決してそれらを避けることはできないように思われます。いくら願っても、種々の災害から逃れることはできないでしょう。それでも、私たちが願うということには、大きな意義があるはずです。
 大本山総持寺を開かれた瑩山禅師さまは、大慈大悲の誓願をおこされ、その願いを実践されて、多くの迷える人々を救われました。願うということは、実践することです。本当に何かを願う人は、その願いを行動におこすものです。
 曹洞宗では、「人権の尊重、平和の確立、環境の保全」を三つの願いとして取り組んでいます。とても大きな願いであり、簡単には実現できそうもない難しい願いです。しかし、皆さん一人ひとりが、それらを強く願うことによって、社会は少しずつ好転するはずです。
 新しい年を迎え、皆さんもそれぞれ心新たに、何か目標や希望をもっておられることでしょう。それらが是非実現しますように願うものです。そして、できれば曹洞宗の三つの願いのような大きな願いを持って、実践して頂きたいのです。分け隔てなく慈しみの心をもって他に接し、お互いに相手を尊重して、対立して争うことを止め、環境を大切にしようと心掛けて生活をする。難しいことですが、日常生活の中で、これらが少しでも実践できれば、今年は必ずよい年になるはずです。 
 年頭にあたり、私たち一人ひとりが瑩山禅師さまのみ教えに学び、そのお心を慕い、ともに仏道を精進いたしたいものです。

月照寺住職 間瀬和人

月照寺の至宝展

 昨年の6月19日から7月7日にかけて、明石市立文化博物館で「月照寺の至宝展」が開催されました。これは、同年3月に柿本人麿像をはじめとする月照寺が蔵する文芸資料等14件が明石市の有形文化財に指定されたことにちなんで催されたもので、新指定資料をはじめ、従来から国指定の重要文化財になっている「櫻町天皇宸翰及一座短籍」をはじめ、明石市指定文化財「三十六歌仙絵及和歌色紙」など13点の寺宝計27点が一堂に展示されました。
 16日間の会期でしたが延べ1380人の方に見ていただきました。内訳は男性と女性がほぼ同数で、明石市内の方は全体の3分の2を占めていました。アンケートでも、「地元に大切なものがあるということで、心豊かな気持ちになれ、うれしく思った」「実際の和歌や文を実物で見ることができたことに感動」「多くの人の尽力により古い貴重な資料が公開され、知らなかったことが明らかになり喜びを感じた」「長きにわたっての保存に敬意を表します」「わかりやすく作品が説明されていて、月照寺をより身近に感じられて良かったです」など好意的な評価をしていただきました。
 また、期間中は講演会も実施され、6月26日(土)は帝塚山学院大学名誉教授の鶴崎裕雄先生に「柿本人麿と月照寺」について、翌27日(日)には冷泉家時雨亭文庫理事長の冷泉為人先生に「冷泉家の和歌や風習」について講演がありました。いずれも定員100名のところ、定員を超える申し込みがあり、聴講できなかった人も多くおられたようです。
お二人ともユーモアを交えながらわかりやすく、柿本人麿のことや月照寺のことを解説され、聴講者も改めて月照寺が古くから朝廷や公家と縁をもっていたことにより、文化財の宝庫となっていたことを再確認されたようです。

鐘楼・梵鐘(大鐘)の補修工事実施

本年度の事業計画案件の一つである鐘楼・梵鐘の安全対策工事を行いました。
 昨年三月に、大鐘(重さ約八百貫=三トン)を鐘楼台座部に降ろし、大鐘上部の吊り部を補強し、又表面の汚れを落としました。
 鐘楼は四月に八百貫の大鐘を支える四本柱の補強工事を行い、又全面塗装を行いました。
 この大鐘は、今年で丁度三十二年、建立当時の見事な姿になりました。
 これからも末永く国土安穏・万民豊楽・海上安全の祈願をこめて打ち鳴らされます。昔の鐘楼は(四百八十貫=一、八トン)昭和十八、戦時物資の兵器の材料として供出されました。
永らく梵音を聞く事が叶わなかったのですが、檀信徒はじめ関係縁故の皆様のお陰を持って三十五年振り昭和五十三年に現在の大梵鐘が落成しました。 仏教では鐘の音は、悪道に透徹し、魔事を降伏し、迷豪を散じ、菩提生覚を成就せしむるなり、と説かれてあります。

お十夜法要

 平成二十二年十月二十五日のお十夜法要は、ご案内のとおり厳粛な法要のあと、米村博美様の軽快で明るいアコーディオンの伴奏と巧みな歌唱指導と参拝者の日頃読経で鍛えている声量とが相まって、『もみじ』『故郷の空』『旅愁』『赤とんぼ』『里の歌』『かあさんの歌』など、懐かしい歌が素晴らしい合唱となって本堂に響きわたる中、いつの間にか時間が来てしまいました。外は小雨でしたが、皆様スッキリされたご様子で散会となりました。

故 宮崎奕保禅師様 三回忌法要紀行記

 昨年九月十三~十五日に札幌の「實相山中央寺」での法要など、曹洞宗兵庫第一宗務所の檀信徒研修会が行われました。第一宗務所からは、二十二寺院のご老師や檀信徒の方々など約百六十名が参加されていました。中央寺は明治時代に創建され、北海道の開拓と共に大きくなった格式の高い専門僧堂で、大本山永平寺の七十八世貫首宮崎奕保禅師様が、大本山に上がられるまでの十八年間、本寺を住持しておられたところです。
 研修会初日の十三日早朝、先ずは神戸空港から新千歳空港までの二時間程の空の旅。機内からは、流れ往く浮雲が一層空の碧さを際出せ、垣間見える家々や海など眼下に広がる景色を眺めていると、出発より幸せな気分を味わえ、自然に”御蔭様“という言葉が湧きあがってきました。
 十三時に中央寺到着。集合写真撮影後、十四時より本堂にて開講式。続いて大本山永平寺先代貫首故宮崎禅師様ゆかりの地で三回忌法要が行われました。法要は、この度の研修会をお世話いただいた雲晴寺のご老師が導師となり『摩訶般若波羅蜜多心経』を唱えられ、続いて永平寺副貫首であり中央寺の現住職南澤道人ご老師によって『普観坐禅儀』『参同契』『宝鏡三昧』が唱えられ、法話に移り、十六時に閉講式を迎えました。法話は”先祖の冥福を祈り供養し、菩薩を弔う“心に沁み入るご説法でした。
 翌十四日は、富良野・ワイン工場、美瑛・四季彩の丘の花畑、夕日に包まれた旭山動物園を訪れ、層雲峡温泉にて泊。翌最終日には、銀河の滝、流星の滝、北海道開拓村を見聞し、十八時に神戸空港に到着。
 高齢のため参加をためらっていましたが、三日にわたり自然の雄大さを満喫しながらも、それだけに先人の開拓の一層の厳しさに思いを馳せながら、無事に帰明できて感謝しています。
 義母が亡くなり、以来月照寺との御縁を頂き、四十四年の歳月が流れました。先々代住職碩禅ご老師様とお出会いできましたことは、私にとって非常に嬉しいことでした。何かにつけ御指導賜り、日々『三聚浄戒』を守り『十重禁戒』を精神的支柱に生きてまいりました。御陰様にて、つつがなく今日あるのは、仏様にて、貴人・先人の御指導の賜物と感謝しています。
 この度も御寺院様や檀信徒の皆様方への感謝の気持ちで一杯です。楽しさを頂きながらも、月照寺にご来寺された故宮崎禅師様に思い偲びながらご冥福をお祈りできた旅。本当に有難うございました。

合 掌
月照寺総代 野島君孝

墓地の整備だより

 土手の一部が洗われている中腹1区の擁壁工事と中参道北区の墓地整備を平成23年~平成25年にかけて順次、工事に入って行く予定です。
 なお、その整備地区には、確認の取れないお墓が複数基あります。平成14年の墓地調査から現在まで、4回に渡り公告等のプレートを巻き、呼びかけをしてきましたが、この間も墓参の形跡がないため、今回の工事を機に無縁墓として整理する予定です。白いプレートが巻かれたお墓に心当たりのある方は至急、ご連絡をいただきますようお願いいたします。
●連絡先寺務所又は富永石材(078・911・6233)

永代供養塔合祀墓のご案内

  少子高齢化・核家族化の中、自分が亡くなったら、遺骨はどうなってしまうのか?先祖代々のお墓の後継者がいないので、いずれは無縁墓になってしまうのが心配。また永年連れ添った主人のお墓は建てたいが、跡継ぎがいないので自分が亡くなった後、建てたお墓はどうなるのか?…など、数年前からお墓に関する相談が増えてきました。月照寺では、このような方のために、永代供養塔合祀墓を設置致しました。

永代墓は、次のような方などご安心してお参りいただけるお墓となります。

◆先祖より代々受け継いでこられたお墓の後継者がおられない方
◆配偶者がおられない方、お子様がおられない方
◆配偶者や遠縁の直系に跡継ぎがいないため、「いつしか
 お墓が無縁墓になってしまう」と心配されておられる方
◆親や配偶者のお墓は建てたいが、
「先で無縁墓になってしまう」と心配されておられる方

お墓のある方も、これからお墓を建てられる方も、安心して何十年もお墓参りをしていただき、その後、お墓参りが難しくなった時点で当寺が永代供養墓に合祀して、永代にわたり故人の供養と管理を致します。
毎年、三月十七日の彼岸の入りの日に合同供養を執り行っています。
お問い合せ●月照寺・寺務所(078)911-4947

<平成23年>

1月1~3日新年祈祷(修正会) 本堂/毎朝
元旦から三日までの毎朝、平穏無事な一年でありますようにと祈願いたします。
3月12日(土)春彼岸会法要 本堂/12時受付
◆13時~法話
◆14時~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
3月17日(木)永代供養塔合祀墓合同回向 永代供養塔前
◆15時~法要
永代供養塔に合祀されている仏様をご供養いたします。
3月31日(木)大般若祈祷法要  本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
大般若波羅密多経六百巻を転読し、檀信徒各家の諸願成就を祈願する法要です。
5月21日(土)
  22日(日)
大本山 永平寺参拝
二年に一度の本山へ皆様お揃いでお参り致しましょう。
8月6日(土)初盆大施食会 本堂/8時開経
初盆を迎えられる新亡の仏様のご供養はもとより、
ご先祖、無縁の仏様にもご供養する法要です。
8月23日(火)
8月24日(水)
地蔵盆 千躰地蔵尊前
◆18時~
子ども達の純真な心を見守っていて下さるお地蔵様を
子ども達でご供養する法要です。
9月10日(土)秋彼岸会法要 本堂/12時受付
◆13時~法話 
◆14時~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
10月15日(火)お十夜法要 本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
曹洞宗のお祖師さまである達麿大師のご遺徳を偲び、
ご先祖様に感謝の気持ちを込めてお念仏をお称えする法要です。
12月31日(土)子午線燈花会・除夜の鐘  鐘楼/22時受付
◆23時~撞鐘開始(受付22時)
鐘つき志納 金1人500円以上 (全額社会福祉に寄付)
「行く年」を省み、「来る年」の決意を新たに。

お願い●市町村合併にともない住所に変更がございましたらお知らせ下さい。