寺報「月照」第24号

令和4年 元日

月照寺に保管されている宝物

百子図(ひゃくしず)

多くの子供に恵まれることは、かつて非常な幸福とされた。
百人の童子が戯れ遊ぶ「百子図」には、多子の願いが込められている。

 謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、檀信徒の皆様のご多幸とご繁栄を祈念申し上げます。
 皆様におかれましても、ご家族で新しき年をお迎えになられたことと存じ上げます。
 一日でも早い収束を願い、曹洞宗におきましても、大本山永平寺・大本山総持寺の両本山をはじめ多くの宗内寺院でも毎朝のお勤めで、宗教や民族を問わず世界中の全ての人の安寧を願い、祈りを捧げておりますが、特に医療従事者の皆様の実践が「菩薩の行い」であるとし、深い敬意と感謝の意を表しております。
 国内では、新型コロナワクチン接種が進み、感染状況が落ち着いてきておりますが、十一月末には、新たな変異株(オミクロン株)の感染者が国内でも確認されております。私たちは過去の感染拡大の波の存在を忘れることなく、基本的な感染対策に加えて三密(密閉、密集、密接)を避けるなどの対策を怠らず冷静に丁寧に日々を過ごしていくことを、共に務めて参りたいものです。
 中国のある禅僧は「元正啓硝祚 万物咸新」(がんしょうけいそ ばんぶつかんしんなり)ということばで新年の到来を祝いました。「元旦、天が幸せをくださり、一切があらたまりますように」の意味です。
 このことばのように、一日でも早く収束して穏やかな一年になることを切に願い新年の挨拶とさせていただきます。

合 掌
月照寺住職 間瀬和人

”亀の水“と言われる前は

 元禄12年(1699)のことである。
月照寺や人丸社の西参道が竣工したとき、手などを清めるために、参道入り口に竹筒で湧き出る水を引き、大きな甕(かめ)(=手水鉢(ちょうずばち))を据えた。
これが「亀の水」と言われる前の姿である。
この水(=手水(ちょうず))は清水(せいすい)で、海辺の井戸のように塩分が無く、また他の市中の井戸のように金気くささも無く、いわば「おいしい水」であった。
このため手水鉢の場は、桶(おけ)で米をといだり野菜を洗ったり、盥(たらい)で洗濯したり、汲んで家に持ち帰ったりなど、「生活の場」としても賑わっていたという。
このようなこともあってか、甕の手水鉢は、しょっちゅう壊れていたといわれている。

”亀の水“と言われ出したのは

 享保4年(1719)のことである。
常陸国(ひたちのくに=(現)茨城県)の人・江戸の目明しの飯塚宣政(のぶまさ)が、江戸から悪人を追って、浪速、播磨へとやってきた。どうしても捕えられない。そこで人丸社に詣で、願をかけた。すると間もなくして願いが叶い、悪人を捕まえることができた。
後日、祈願成就の御礼にと訪れ、入山前の清めをしようとすると、甕が壊れていた。
これを目にした宣政は、「嘆かわしい」と思い、「割れない石の手水鉢」を寄進した。
そしてその年の12月、石の手水鉢への吐水口(とすいこう)に”亀“が据えられ、今の姿へとなる。
以来、誰とはなしに、親しみと愛着を持って「亀の水」と呼ばれるようになり、「長寿の水」といわれるようになった。
今日も”亀“の口からは絶え間なく清水が流れ出て、「常陸國/飯塚氏/宣政」と刻まれている手水鉢が受け続けている。
この”亀“を据えたのは、寛文4年(1664)に建立されていた「播州明石浦柿本大夫祠堂碑」を背負っている”亀“を模したのであろう。通称「亀の碑」である。
なお、「亀の水」の”亀“は、長寿を象徴する蓑(みの)のような尻尾を持つ”蓑亀(みのがめ)“に似ているが、耳がとがっている。
実はこの”亀“、「贔屓(ひいき)」という中国の”伝説上の神獣“で、龍から生まれた九頭の子の一つで、「重きを負うこと」とか「文章の読み書きすること」とかを好むといわれているものである。

”亀の水“の今は

 手水鉢を覆う「手水舎(ちょうずや・ちょうずしゃ)」は、平成2年(1990)に、「手水舎(ちょうずや・ちょうずしゃ)」の上屋根の吹き替えと”亀“を囲う柵を新しくした。
この上屋根は、平成7年(1995)1月の阪神淡路大震災により損壊したが、6月に銅板に吹き替え、また幾度となく盗難に遭った浄財箱を石柱の物にし、今の「亀の水」の姿となっている。
大震災のときも止まること無く、今日も「おいしい水」が湧き続けている「亀の水」は、時間帯によっては順番待ちをしながら、数個のポリタンクや5・6本のペットボトルに「おいしい水」を一杯にし、手押し車やバイクや自転車などで持ち帰る人が訪れている風景があり、現代版「生活の場」となっている。
このような「亀の水」を大切に維持し続けられるように、浄財も足しにしながら、定期的に水質検査と洗浄をしている。
また、「亀の水」は、明石市の遺跡となっているとともに、環境省の「各自治体が考える”代表的な湧水“」の一つとして掲載されている。
《終わりにあたって》
「”亀の水“物語」は、「月照寺寺伝(第5版)」、「明石名勝巡覧」(橋本海関著)、「あかし昔ばなし」(明石総局編)、「タルホ大阪・明石年代記」(稲垣足穂著)、「明石 郷土の記憶‐あかし 文化遺産」(明石市立図書館編)などを参照・引用しながら、月照寺護持会のある者がまとめたものである。

<お知らせ>本堂にエアコンを設置

 昨年の七月”本堂にエアコンを設置“いたしました。これにより、毎年八月六日に営む『初盆大施食会』は、多くの御一家が参列される法要でありますが、涼しい中で執り行えました。ご参列の方の中には、「本堂もエアコンがきいていましたね」とお話されている方もいらっしゃいました。
 また、真夏の時期の『年忌法要』も、蒸し暑さを気にせずに法要に専心していただけるようになりました。営まれた御一家からは「今年は涼しい中での法要でした」という感想もございました。
 そして、残暑真っ只中、九月の第二土曜日の『秋彼岸会法要』も、涼しい環境の中で営めるようになりました。皆様の御参拝をお待ちしております。
 なお、設置にあたっては、仏床のある内陣、その左右の上宮と下宮、これらの南側の外陣、それに天井画など、おつとめの環境を損なわないようにと施工いたしました。
 最後に、設置に際し、事業費の一部を皆様の護持会よりご支援をいただいています。誠にありがとうございました。

 お正月に檀信徒並びにお墓があるお宅にお送りします郵便物が毎年何軒か「転居先不明等」で戻ってきます。お寺としても転居先が解らず困っております。住所・名前の変更等ある場合は必ず月照寺の方へ連絡下さい。特にお墓が有るお宅は必ず連絡して頂きますよう重ねてお願い致します。
 また、年々、月照寺でも後継者がいなく「墓じまい」をするお宅が増えてまいりました。参る方がいなくなり大切なご先祖様が眠っておられるお墓が無縁仏になることもお寺としては心配です。
 檀信徒並びにお墓があるお宅で後継者がいなくなり、ゆくゆく無縁仏になってしまうので「墓じまい」をお考えのお宅は遠慮なくお寺へご相談ください。

月照寺

県外にお住まいの檀家様へ
遠方であっても、ご家族がお亡くなりになりましたら、葬儀の段取りをされる前に先ず、菩提寺であります月照寺の方へ、速やかにご連絡下さいますようお願いいたします。

<令和4年>

1月1~3日新年祈祷(修正会) 本堂/毎朝
元旦から三日までの毎朝、平穏無事な一年でありますようにと祈願いたします。
3月12日(土)
春彼岸会法要 
本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
3月17日(木)永代供養塔合祀墓合同供養 永代供養塔前
◆15時~法要
永代供養塔に合祀されている仏様をご供養いたします。
3月31日(木)大般若祈祷法要  本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
大般若波羅密多経六百巻を転読し、檀信徒各家の諸願成就を祈願する法要です。
6月皆様に好評の恒例、月照寺バスツアーですが、
本年度も新型コロナウイルスの影響で実施を見送ることとなりました。
また、来年開催できることを願っております。
8月6日(土)初盆大施食会 本堂/8時開経
初盆を迎えられる新亡の仏様のご供養はもとより、
ご先祖、無縁の仏様にもご供養する法要です。
8月23日(火)
8月24日(水)
地蔵盆 千躰地蔵尊前
◆18時~
子ども達の純真な心を見守っていて下さるお地蔵様を子ども達でご供養する法要です。
9月10日(土)秋彼岸会法要 本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話 
◆14時30分~法要
この世を越えた彼岸に想いをめぐらし、亡き人を偲んでご供養いたします。
9月26日(月)ペット供養合同法要 ペット墓前
◆15時~法要 
年に一度、大切なペット達を偲んでご供養する法要です。
10月25日(火)お十夜法要 本堂/12時30分受付
◆13時30分~法話
◆14時30分~法要
曹洞宗のお祖師さまである達麿大師のご遺徳を偲び、
ご先祖様に感謝の気持ちを込めてお念仏をお称えする法要です。
12月31日(土)
子午線燈花会・除夜の鐘 
 鐘楼/22時受付
◆23時~撞鐘開始(受付22時)
鐘つき志納 金1人500円以上 (全額社会福祉に寄付)
「行く年」を省み、「来る年」の決意を新たに。